研究会情報 

年4回の研究会の記録。書評会、ワークショップなど


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 この研究会は、「汚穢」「きたない」という概念と感覚をつまびらかにすることを通じ、倫理の新しい次元を描くことをめざします。M.ダグラスは、汚穢とは秩序を乱すもののことであるとしています。本研究会で考えていく汚穢や汚穢忌避は、身体からの排出物、死、ごみ、汚染・感染に対するもの、あるいは社会秩序を成り立たせてきた力やしくみを明るみに出すような、弱者やマイノリティの排外など、広い範囲のものを含んでいます。

 わたしたちが日常的に使うことばを考えてみると、たとえば公的立場にある人の不正な行いは「汚職」と呼ばれますし、犯罪行為の実行犯は「手を汚した」ともいわれます。「よさ」「行為の正しさ」をめぐる道徳や倫理の領域は、じつは「美しさ(みにくさ、きたなさ)」「清潔/不潔」の概念と切り離せないのではないでしょうか。だとすれば、それはなぜなのでしょうか。本研究会の出発点のひとつは、そうした問いです。

 また、現代の社会では、特定の社会集団を「汚穢化」し、同時に自身を「脱汚穢化」しようとする言動がはしばしで見られるように思われます。感染症への危機感の増大にともなって、自身と他者の身体に対する感覚が汚穢忌避と密接に関連するかたちで再構成されていてもおかしくありません。そういったことも考えていきたいと思います。

 この研究会では、さまざまな専門の方をお呼びしながら、人類学、倫理学、社会学、歴史学、環境学、地理学、美学など異なる領域で積み重ねられてきた知見と発想を交わしていきます。さらには、イメージの交換を重視するような、通常の研究発表とは異なる思考と議論のかたちをも模索しながら、いまだ秩序だった理論・概念としてあらわれていないものを探っていきたいと考えます。

2021.8.1